『暗殺教室 卒業編』:前作のようなコミカルな面白さは影を潜めるが、物語の芯がしっかりした熱き魂がこもった作品!

暗殺教室 卒業編

「暗殺教室 卒業編」を観ました。

評価:★★★

「このマンガが凄い!」などのマンガ大賞に輝いている同名コミックスの映画化第2弾。前作の公開は昨年2015年なので、初めから続編ありきという形で企画が進んでいるものでしょう。2年くらい前に僕の中でマンガブームがあって、本作の「暗殺教室」にしろ、「僕だけがいない街」などもその頃に読んでいた作品が次々と映画化されるのが、今の日本映画界なんだなーと(批判ではありません笑)思う今日この頃です。本作の監督は、前作に引き続き、「海猿」の羽住英一郎が務めています。

前作では地球を侵略に来たはずの謎の生命体が、なぜか落ちこぼれ学級の先生になり、生徒との交流を深めながら、暗殺という一見変わった出来事を繰り返しながら毎日を過ごしていくというSF+コメディの要素が強い作品でした。その中で、個性ある生徒を一人一人紹介しながら、そこに暗殺という指令を持った刺客となるメンバーも次々に加わっていき、それでいて、様々な生徒が集う学級(クラス)という小世界を作り上げていってしまうという、変だけど、芯はまともな青春ムービーとなっていました。

本作はいよいよ暗殺の期限であり、地球の滅亡の日でもあるイベントが近づく中、秋の学祭から物語がスタートしていきます。前作でクラスとしての絆が出てきた中、今度は教師である生命体”殺(ころ)せんせー”と、生徒との絆という、教師(先生)と生徒の結びつきを、本作では色濃く描いていきます。ここでキーワードとなるのが、”絆(きずな)”という言葉。親子・兄弟でも、恋人・友人同士でも、教師・生徒、上司・部下との関係でも、単なる人との関係が”絆”という言葉で結びついていくときには、何か大きな出来事が絡んできます。それは一種の愛情劇であったり、友情劇であったり、何かしら感情が彷彿としていく中に、人との関係が浮彫りになってくる。人は家庭であったり、会社であったり、学校であったりという大きなシステムの中でコマとしか動いていないと思われがちですが、その中でも人が持っている喜怒哀楽を飾りなく見せれる関係になったとき、信頼であったり、絆で結ばれる関係になる。本作で見事なのは、マンガというフレームを通してはいながらも、”暗殺”という一種の感情的かつ肉体的な行為(つながり)によって、教師と生徒に絆が生まれていくことがよく分かるのです。地球滅亡と周りが叫ぶ中で、殺せんせーと生徒たちはその絆しか見えていない、、そして、卒業式というイベントに向かっていくだけしかないのです。

「僕だけがいない街」と違い、本作は原作のマンガ感をいい意味で残していますが、逆に悪い意味で軍隊の描写などが安っぽく映ってしまうのも残念なところ。また、前作と違い、主人公の殺せんせーと、生徒代表としての山田涼介演じる渚に焦点が当たりすぎていて、副担任をはじめとした先生たちや他の生徒たちのキャラクター像が少しボヤケてしまったもイマイチな感じがします。ですが、こうしたポイントがありながらも、芯に据える物語の熱さはなかなかのもの。見かけはふざけていそうですが、中身は立派な道徳観にも基づいている真剣な眼差しを秘めた良作となっています。

次回レビュー予定は、「グランドフィナーレ」です。

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